力の抜けた啓太をゆっくりと床に横たえて。その上に体重をかけないように覆い被さって。
ちゅっ、ちゅっと。
わざと小さな音をたてて七条は啓太の下唇を吸う。
啓太は唇を薄く開き。かすかに眉を寄せ。物足りなそうに七条の唇をつかまえようとしていた。
七条にすり寄せられ、揺れている腰は多分無意識の事なのだろう。
たかがキスにあっけなく高ぶってしまう啓太。七条はそうさせているのが自分だという事に、不思議なほどの満足感を覚える。
啓太の、布越しの硬い感触を楽しみながら。ふとももを緩く押しつけながら。七条はその上気した顔に頬を寄せてゆっくりと囁いた。
吐息とともに。耳から甘い毒を注ぎ込むように。
「…触って…啓太くん」
そしてわずかに顔をはなして啓太をのぞき込む。
ぼんやりと開かれた啓太の瞳に、なにも怖くはないと優しく笑いかけたのは。自分でも空々しい位、嘘の笑顔だったが。
啓太は熱に浮かされながらも、七条をすがるように見返してくる。
「気持ちよくしては…くれないんですか…?」
少し困ったような口振りで七条は訴える。啓太が震えながら息を吐いた。
「…しちじょ、さん…」
小さく自分の名を呼ぶ声に、七条は褒美のようにふれるだけのキスを落とした。


ファスナーを降ろす事がこんなに難しいとは思わなかった。啓太は思う。
間近にある端正な顔は啓太が見つめても、そそのかすようにその鼻を軽く触れさせるだけで。
震える手が不器用に金具と格闘するのを、むしろ楽しんでいるようだった。
「…ち、じょう、さん…」
喉にかかった声で。
啓太は助けを求める。やさしい紫の瞳を持つ人に。その瞳の底にひそんだ高い熱量にもきづけないまま。
「…啓太くん。僕は手伝えないんです」
すまなそうに、けれどきっぱりと七条が言う。
啓太の脇についた手を動かす事は出来ないと。それは啓太のためであると。
「ほら、支えていないと啓太くんが重いでしょう?」
そして七条は腕の力を抜く。啓太を押しつぶすように覆い被さって。
ことさら自分の重みを強調するような、体を重ねる状況を嫌でも思い出させるやり方で。
「…ね…?」
「……ずるい…」
目元を赤く染めながら啓太は小さく抗議した。耳元で七条が笑った気配がする。
「怖くなんかないですよ。同じ、でしょう?」
自分はどんどん逃げ場を失っていく。
重ねられた腰に熱を感じる。自分のものではない硬い感触。
それに煽られる。
涼しい顔をしながら七条も興奮している、その事実が。
早くなった呼吸をごまかすように胸を大きく上下させながら。啓太はこくりと喉をならして唾を飲み込んだ。





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