七条に、反射のようにキスをして。
ぶつかった歯と唇の痛みに我に返った啓太は慌てて身を引こうとした。
しかしいつのまに廻されていたのか、後ろ頭を支える七条の手に阻まれてかなわない。
「…ち…じょう…さ…」
小さく名前を呼んだ声もその相手の口の中に消えてゆく。
啓太は顎をあげて。七条の唇を上から与えられ。
口の中をくまなく舐められている。
生き物のような舌が上あごを撫でている。
敏感な粘膜をくすぐられ。
歯の裏に舌を這わされ。
啓太は膝にもう力が入らなかった。
出来る事はただだらしなく口を開いている事だけ。驚きに縮こまった啓太の舌に七条のそれが優しく触れる。舌の脇を撫でるようなその動きは、啓太を味わうようだった。
体が熱い。
七条のキスには何か魔力が秘められているに違いない。
耳元で血管が鼓動をうつ。その度に七条の魔法は体を駆けめぐる。
自分の体は数分前とは全く違うものになっている。
まるで感覚のみを栄養として生きるものに。
飢えた皮膚が。唇が。七条を求めている。
もっと。
もっと、触れたい。
もっと欲しい。
七条さんを。
体の奥底に覚えのある感覚が蘇る。
じん…と腰をはい上がってくるものは七条に教え込まされた快感の名残で。その時の七条の動きを啓太はいやでも思いだしてしまった。
ぐじゅぐじゅの自分を出入りする熱い塊。
記憶にある、体の中をこすられたその感覚が啓太をあっという間に染め変えてしまう。
膝から、腰から力が抜けてしまう。
すがる手さえどこにあるのかもわからずに。
かくりと折れた膝。
骨をなくしたかのようにくったりした体に、二人の唇は一瞬離れたが。
その隙間は啓太がさみしいと感じる間もなく。
乾いた空気を感じる間もなく、すぐに塞がれた。






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