sweet  



 ゆったりと椅子に腰をかけた七条の前に啓太は跪いて揺れる目で七条を見上げる。
それは心細そうな、どこか助けを求めるようなものであったが、七条はそれに全くきづいていない様子で啓太の頬をなでていた。
「七条さん…オレ…」
できない、と声にこそならなかったが啓太の唇が言葉を紡ぐ。
赤くなった目元が今にも泣き出しそうで。七条の唇には自然笑みが浮かんでくる。
「…できない、ですか?伊藤くん」
囁くように言ってやると啓太の肩から力が抜けるのがわかった。
まだまだ経験値の低い啓太には、ただ跪いているというこの状況ですら許容範囲ギリギリなのだろう。
羞恥心と怯えに体中をいっぱいにして。
けれどもどこか期待をもうっすらと滲ませつつ。
七条がこの甘い試練から解放してくれるのを待っている。
だめですよ、伊藤くん。許してはあげられません。
七条は頬を撫でていた指をそっと啓太の唇に触れさせた。親指で思わせぶりに下唇をなぞりながら、悲しそうな顔をつくると沈んだ声で言葉を唇にのせた。
卑怯なのは百も承知だ。
「…それは…。僕が『変なヤツ』だから…?」
「そんなことっ…!!」
あるわけない。
まっすぐに七条を見つめる瞳はきらめくようだ。
何を馬鹿な事を。と、怒りさえ漂わせ。先程のためらいなど微塵も感じさせないで啓太は伸び上がると七条に口づけた。
それは不器用な。勢いに任せただけのもので。
ぶつかった歯は鈍い痛みさえ感じたが。
七条の胸は陶酔に震えた。
暖かい液体が体の奥からわき出て来るようだ。それが指先まで甘く痺れさせる。
七条は他の誰にも今まで感じた事のない感覚にうっとりと目を細めた。






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