パジャマでお邪魔。


「し、七条さん?」



寝ようかなー。
七条さんはもう寝たかなー。
また明日、会えるなー。

なんて。
親友が聞いたら砂をはくであろう甘いことを考えながら。

夢で会えるといいなあ。

なんて。
じゃあいっそ会いに行けばいいじゃないか…と涙混じり、溜息まじりに言われそうなことを考えながら。

伊藤啓太が自分のベッドに潜り込んだ時。ちょうどその時。
一人きりだと思っていた部屋で声がした。


「こんばんは。伊藤くん。
突然ですが、会いたくなったので来てしまいました。
いけなかったでしょうか?」
まさに会いたいと思っていた人物が、立っていた。

「いけなくなんかないです!
オレこそ!会いたかったし!嬉しいです!
でも鍵!」
ぶんぶんと勢いよく頭を振りながら。頬を赤く染めながら。
啓太の頭は疑問符に満ちていた。

鍵はかかっていた筈なのに。
鍵が開いた音も、ドアが開いた音も聞こえなかったのに!!

何故?
なぜ?!

でも七条さんならなんとでもなるだろうけど!
壁だって抜け出てきそうだし!!
いや!壁は抜けない。抜けないだろう。
落ち着け!オレ!!

啓太の混乱を察したように七条がうそぶく。にこにこと笑いながら。


「愛の力です」
「あいの…?」
「愛の」
言っていることも笑顔もとてつもなくうさんくさい。

「七条さん」
「はい?伊藤くん」

でも。いいか。
会いたくって会えたから。
細かいことは、いい。
親友が聞いたら、どこが細かいことなのかと頭を抱えるようなことを思って。
啓太は待ちかまえている恋人の胸にそっと身を寄せた。