欲望 





「…や…ぁっ……」

「嫌、ですか?本当に?」
柔らかな声に甘く毒を含ませて七条はなめらかな背中に声を落とした。
その吐息にすら感じるのだろう、腰をよじる姿がなまめかしい。

「じゃあ、やめましょうか」
小さな尻に潜り込ませた長い指を思わせぶりにひく仕草に、啓太は息を呑む。
「っ……」
小さく首をふると啓太は壁に上半身を預けたまま首だけ巡らせて七条を見た。その目のふちが紅く染まっている。
唇がもの言いたげにふるえたが、たよりなく吐息を漏らすだけのそれより潤んだ瞳の方がよほど雄弁だった。

目尻に浮かぶ水滴は汗だろうか。
涙だろうか。

壁に手をついて尻をいやらしくつきだす。
水滴の他何も纏わない肌を触れ合わせて、体の奧に男の指を飲み込んでいる。
その状態は、まだ性的なふれあいに慣れているとは言い難い啓太にとって
すでに許容量をこえているのだろう。
けれどもその背中に期待が滲んでいることも確かで。
男をその身に飲み込むこと、快楽を得ることに禁忌を感じ、怯えながらも
啓太が七条を求めていることは紛れもない事実だった。
「どうしたの?伊藤くん」
身をかがめて七条は唇で啓太の背中に囁いた。

ひくりと反応をかえす肌が七条の嗜虐心を刺激する。
涙が浮かんだ瞳も、噛みしめた唇も七条をあおる材料になることを啓太は知らない。
指は啓太の中を出入りし、かきまわしている。
柔らかく溶けた粘膜は貪欲だった。
揺れる腰は飲み込んだ指を奧へ奧へと引き込む。
もっともっと、と。
指では足りない、と。
七条の高ぶりを焦れたように誘う。
「欲しいって、いってくれないんですか…?」
柔らかい内ももに、七条が思わせぶりな仕草で腰をすりつけると
粘膜が指をきゅっとしめつけた。
入れてほしい。
もっと太いものでぐちゃぐちゃにかきまわして欲しい。
飢えたように指を舐めしゃぶる粘膜はなにより正直だった。
七条が開いて七条が仕込んだ体。
キスすら知らなかった啓太がこらえきれない欲望に身を灼いている。
七条を求めている。

「ほし…ぃ……っ…」
こらえきれなくなったらしい涙が啓太の瞳からこぼれ落ちた。
「…ち、じょ…さ……」
濡れた声がすがるようだ。

激しく突き入れて思うままにしてしまいたい衝動をこらえて,ひどく満足そうに
七条はゆっくりとその身を埋めていった。








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