中嶋英明。将来の夢、弁護士。



「中嶋さんっ!!この将来の夢、って!」

「…お前、何を見ている」

確かオレがこの使えない新学生会会員に頼んだのはメールの筈だ。
ここのところなじみになっている頭痛をこめかみに感じつつ、
中嶋は喉まででかかった言葉を飲み込んだ。

「学生名鑑です。
メールは各部に配るから、部長の名前と、ついでに同好会の会長の名前を確認しようと思って」

偉い?偉い?とその目が言っていて、中嶋は軽くめまいを感じる。

すこしは出来るようになりましたよね!
そんなキラキラした瞳から、すーと目を逸らして。
思わず握ってしまった拳を溜息とともにほどく。

…まだ覚えてなかったのか…こいつ…。

罵声を飲み込むのにも慣れてきた。



一般の学生なんてこんなものだ。
こんなものだとも。
ああ、自分とか、丹羽とか。
認めたくはないが会計部とかの処理能力を、この伊藤啓太に求めるのが間違っている。

わかっているが。


ここのところ自分がひどく我慢強い人間になった気が、中嶋は、した。


「そうじゃなくて!
中嶋さん!将来の夢!って!」
「弁護士だが、どうした。
オレは高いぞ」
「…まだなってもいないうちからよく言えますね。
ホントに中嶋さんらしい」
「なにがだ。どこがオレらしい」
「悪徳弁護士でしょう?」



ゴン!


不審な音に驚いて扉をあけた時、中は地獄絵図だった。
そう丹羽は後に語った。


それでも使えない伊藤啓太は野望に燃えて学生会に通ってくる。
実は神経細かい中間管理職中嶋は胃薬のお世話になりつつ、
上司と部下に振り回されている。


その姿がちょっと楽しそうだと気づいているのは丹羽だけだ。