会いたいと思う気持ち



その日は卒業式で。
3年、いやもう卒業生と呼ばれる生徒達は
振り向かずに校門を出ていった。
にぎやかに。
しんみりと。
肩をすくめ。
背筋をのばし。

その背中を見送ったまま啓太は動けなかった。
あたりが急に静かになったように感じるのはどうしてだろう。
ああ、もうあの人達がいないからだ。
そのことに思い当たりくしゃりと顔を歪めた。


「…啓太…?」
優しく自分を呼ぶ声に啓太は振り向く。
そこにはいたわるような瞳をした和希がいた。
「かず…」
何も言わなくてもいいというように和希がうなづく。
すがりつきたい。
ふとそんな衝動に襲われて啓太は唇をかんだ。
今の俺はまるでおいて行かれて途方に暮れた子供のようだ。
もう子供じゃないのに。
そんな自分の弱さを振り切るように啓太は無理矢理話し出す。
「なんだか、寂しいんだ。
もう…いないんだなって思ったら。
信じられないけど。
やっぱりホントのことなんだよなあ…って」
「…そんなに人の縁なんて薄いものじゃないんだよ。啓太。」
言いながら和希は手を差し出す。
誘われるまま素直にその手に自分の手を置き
やさしく引かれて啓太は歩き出す。
もうこの場から動けないと思っていたのに。
柔らかい声は啓太を包み込むようだ。
「自分が会いたいと思い。
相手が会いたいと思い。
どちらかがそう思っただけでも切れたりするものじゃないんだよ。
会えるよ。
悲しい事なんてないんだよ」
「会える…か?」
「会えるさ。いつだって。お前が会いたいと思う限りね」
和希は優しく見つめていて。なぜか啓太は胸がざわめいた。
「和希、は…?」
「お前が嫌でも側にいてやるよ」
啓太は少し笑って頷いた。
その瞳にはまだ涙の名残があったけれど。


「和希って大人みたいな事いうんだな」
「大人ですから」
啓太の髪に手をおいて。
和希はにやりと笑って見せた。



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