君は星。夜に輝く。





よく他人は俺のことを羨む。
まるで全能の存在のように。全てを手に入れる事が出来ると。
それがどんなに的はずれのことか、知ろうともしないくせに。
実際には俺のこの手の中に幸せは一つしかない。
君と出会えた事だ。
君と出会えて一緒に過ごした事だ。
でも君にとっては不幸なことだったのかもしれない。
高熱にうなされる君を見た時。そう、思った。

柔らかい気持ちや何だか側にいて離れたくない気持ち。
ぎゅっと抱きついた体を抱きしめ返すとき感じる胸の暖かさ。
そんなこと今まで読んだ本のどこのページにも載っていなかった。
高名な学者の言葉にもなかった。周りの大人は教えてくれるには忙しすぎたみたいだ。
君が俺に教えてくれた。
君だけが教えてくれたことだ。

相手のことを思うなら離れた方がいいこともあるってことも。

別れの時が近づいていることは知っていた。
君は君の暮らしに戻る。
俺は俺の道に進む。
離れなければならない。それは仕方ないことだ。そう頭の中では思っていた。
誰とだって別れはいつかやってくる。
でも知識として知っている事柄と目の前の君が結びつかない。
ずっと一緒なんて子供みたいな事、夢にも考えてはいなかった。
けれど君と会えなくなるなんて考えてもいなかった。
ずっと手を繋いでいたかった。俺を見上げて笑うその瞳に映っていたかった。
君の手の温かさ柔らかさを手離したくないんだ。
何があろうと側にいたいんだ。
でも離れた方がいいね。
もう俺と会わない方がいいね。

この手の中のものは君に返すよ。
たった一つだけど、君がくれたものだから君に。
もう近くにはいられない俺のかわりにどうか幸運が君に降り注ぎますように。

君は元気に大きくなって、いずれ俺のことも忘れるだろう。
俺も忘れようと思う。
でもきっと思い出すだろうね。きっと何度も未練がましく。
小さな手や笑顔や俺を呼ぶ声の響きや。あたたかさも。日向のような匂いも。
夜空に輝く星を見上げるように。

小さなお前を思い出すよ。啓太。








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