ドレス




「どうだ。テツ」
英明は愛しい男の前でぐるりと廻ってみせた。
中嶋はこの日のためにドレスを自分でデザインしたのだ。しっかりとした肩幅を生かすホルターネックである。
幾重にもなったオーガンジー、繊細なレース。ほの見える肌色が色気と羞じらいを同時に醸し出している。
「…どうだって…」
丹羽の眉間には深いしわが刻まれている。
なにを言えばいいというのか。
中嶋が言って欲しいであろう言葉なら100も思いつくが、自分の感想というのはまた別だ。
そしてそれが全くかみ合わないものであろう事も。
片頬に期待に満ちた中嶋の視線をビシビシ感じる。
「…ヒデ…」
ため息を一つついて。舌で唇を湿らして丹羽はようやく口を開いた。
「お前、それ…やめろよ」
それは中嶋の求めている言葉ではないだろう。丹羽は言ってしまってから後悔を感じる。
ドレスを纏った英明は幸せに見えた。
衣擦れの音に丹羽は視線を中嶋に戻した。
中嶋がその肩からドレスを落としていた。丹羽の目にはうつむいたその横顔にさみしげな影が見える気がした。
似合うといえば良かったのだろうか。
どんな姿でも英明は英明なのだから。
「ヒデ…」
丹羽の言葉に中嶋が振り返る。その目にあったのは失望ではなく。
「いいんだ哲也。分かっている。
他の誰にもみせたくはないんだな」
「いや…」
中嶋らしい思い切り前向きな答えに目眩を感じる。
「…なにも着ない方いい…か?がっつくな」
「…がっついてもいないがな」
丹羽は片頬で笑った。誘う様に綺麗に筋肉のついた中嶋の腕が首に巻き付いてくる。
「お前のからだは、何も着てない方が好きだな」
そして丹羽は。
これから起こることを思い切り匂わせるやり方で、中嶋の腕に噛みつく様なキスをした。