「ん?恋人にキスしてくれないんですか?」

その時。七条臣は浮かれていたのだ。



できたての恋人はキス一つするにも
すべての勇気を振り絞らなければならないほどの
まっさらさで。
それでも紅い頬が。
困ったように七条を見つめる揺れる瞳が。
きつく結ばれた唇よりも雄弁に七条を好きだと言っていて。

君に触って、離れると。
ほらもう君が足りない。

「不思議ですね。
僕は一人で平気だった。
郁がいて僕の世界は完璧だったのに。
今では何故かそれがとても味気なく思えるんです。
ずっと君に触れていたい。
いっそずっとつながっていられたら
こんな馬鹿なこと考えなくなるんでしょうね」

ずるい。ずるいですよ。七条さん。
自分だけが好きみたいに言わないでください。
きっと俺の方が余計に好きなのに。



そんな話。